再びGLBT Historical Societyから。到着日時は日本時間の元旦午前2時になっているが、ホットメールは着信日時(日本時間)を送信日時としてタイムスタンプするようなので、たぶん大晦日(とは言わないか、向こうでは)の夜の送信。熱心ね。

 If only Harvey Milk could see these 2012 headlines:
 - For the first time, a U.S. president endorsed the freedom to marry for all people.
 - For the first time, we won statewide voter initiatives in favor of same-sex marriage (breaking a 32-vote losing streak).
 - For the first time, we elected an openly gay U.S. senator (the Honorable Tammy Baldwin, D-Wisconsin).
 2012 was a critical chapter in the history of the GLBT movement.
 Your gift today ensures The GLBT History Museum keeps telling the entire story.
 On Harvey Milk's birthday this year, I arrived to find the museum packed with students. They had been assigned to write about Milk and his legacy, and they knew they could find original artifacts, images and information about him there. Every day at the museum, young minds that will determine the future course of society learn about visionary and courageous individuals who came before them.
 The challenges for a GLBT History Museum are large. But the role we serve in weaving together this movement's past, present and future is critical for society as a whole.
 We tell this story for lovers of GLBT history, wherever you are.
 Warmly,
 Paul Boneberg
 Executive Director
 P.S.: We hoped to hit our goal for the challenge match by now, but we're still short...
 Your gift in the next 15 hours will move us closer to that goal -- and will be doubled by the city of San Francisco!

 2012年のヘッドライン、ハーヴェイ・ミルクにこれを見せてあげられたら:
この年に初めて、合衆国大統領はすべての人々に結婚する自由があると支持表明した。
この年に初めて、州規模の住民投票同性婚を認める結果を勝ち取った(32回もの敗北を経てようやく)。
この年に初めて、私たちはゲイであることを公表している合衆国上院議員を当選させた(タミー・ボールドウィン氏、民主党ウィスコンシン州
2012年はGLBT運動の歴史において重大な時期となった。
あなたの寄付によって、GLBT 歴史ミュージアムはそのすべての経緯を語り続けることができる。
今年のハーヴェイ・ミルクの誕生日、私がミュージアムに行くとそこは学生たちでいっぱいになっていた。彼らはミルクと彼が遺してくれたものについて書くよう宿題を出されていたのだが、ミュージアムでは彼の遺品や彼に関する映像や情報に触れることができるのだと理解してくれた。ミュージアムでは毎日、これから社会が進むべき道を考えようという若者たちが、先を見通し勇気をもって彼らの前を行った個人たちについて学んでいる。
GLBT 歴史ミュージアムに課された課題は大きい。しかし、この運動の過去、現在、未来を編み上げていくという私たちの役割は、社会全体にとって重要だ。
GLBT の歴史を大切に思う人々に向けて、その人がどこにいようとも私たちはこの物語を語っていく。
心を込めて
館長 ポール・ボーンバーグ
追伸 私たちは現時点までに目標を達成しようとしていたが、まだ十分ではない…
これから15時間のうちに寄付があれば目標にもっと近づける。そしてそれはサンフランシスコ市によって倍額にされるだろう!

 途中いくつか訳しあぐねた表現があったのでキュレイター氏にメールでお尋ねしてみた。数分後にお返事が来たのでびっくり。We are wired together wherever we are.ですなあ。1ヶ月半にわたりヨーロッパ出張で数日前に戻ったばかりとのこと。イギリスでは、サセックス大学のCentre for the Study of Sexual Dissidence (「障害」は入っていないので「性自認不一致研究センター」とでも訳すか)に招かれミュージアムでの取組みについて講演されたとのこと。以下、お尋ねした件につき要点のみ訳出してみる(原著者許諾ずみ)。

文中"statewide voter initiatives" というのは2012年11月に合衆国の4州で同性婚に関して実施された投票住民投票referendumのこと。メーン、メリーランド、ワシントン各州の投票では同性婚を合法化する提議initiativeを通過させ、一方ミシガンの投票では同性婚を禁じるよう州憲法を変えることになるはずだった提議を却下した。
これらの提議により合衆国では初めて投票によって同性婚が認められた。――さらにミシガン州では同性婚を禁じる措置が初めて投票の場で敗北した。「32回もの投票」の後での勝利という表現は、これまであちこちの州で同性婚に関する住民投票が行われたことを指している――そしてどの投票においても、結婚の平等を支持する人々は多数決において敗れてきた。つまりこの前の11月に実施された4州での投票は、本当にいくつもの敗北を重ねた後に勝ち取られた素晴らしい勝利だ。
カリフォルニア州について言うと、結婚の平等と例の提案8号 Proposition 8 の合憲性という問題が、今年3月の合衆国最高裁での審理の前に議論されることとなるだろう。

 ちょいと注記すると、ふつう「住民投票」は referendum と呼ばれて意思表示のみにとどまるもののようで、藤吉はきちんと法的な位置づけを知らない(というか調べない)が、ここにいう voter initiative とは異なるようだ。こちらは法的もしくは政治的な拘束力がありそう。政治的拘束力なら referendum にもありそうだが、このへんちょっとよくわからない。あと、日本語版ウィキペディアにも出ているが、同性婚の合法化自体はもう少し早くから実現している。同性婚を禁じる、あるいは結婚を異性同士にのみ認める州の憲法条項が違憲である(ヘンな言い方)という州の最高裁の判決に基づき実質的な合法化が進んでいる。今回の「初めて」は、住民投票での初勝利と見ていいだろう。
 などと言いながらウェブ上をうろちょろしていたら、それについてブログしてる方がおられた。どんな方かと思って他の記事を見てみるとミシガン州のRight to Work(歩く権利じゃなくて)についても書いておられる。いろいろおられるですなあ。
 結婚(家族と言ってしまってもよい)を「複数の成人成員による共同生活と財産共有に関する制度」と見れば、別に男女ひと組でなくても全然かまわない。財産共有を財産継承すなわち相続の問題と一度切り離して考えてみることは、決して悪いことではないと思う。
…言わずもがなのことであるが、同性婚の合法化に賛成することと、自分が同性婚を選ぶこととは関係がない。それはちょうど、夫婦別姓に賛成することと、自分が夫婦別姓にすることとは関係がないのと一緒であり、また、結婚に関する法律が存在していることに批判的であることと、自分が結婚しないこととは関係がないのと一緒である(たぶん)。自分が相手と同じ苗字になりたい、相手を自分と同じ苗字にしたいという願望を持っていることを「同じ苗字でないと家族としての一体感を保てない」という言葉でごまかす場合があるが、ここには当然「私は」という主語を入れてしかるべきであろう。オレのオマエと言わせたいわたし、アナタのワタシと言わせたいわたし。
 関係ないが(あるかな)高校のとき国語便覧の古典の部分を見ていて「更級日記」の作者が「菅原孝標女」とあり、これを「すがわらのたかすえのむすめ」と読ませることを知ってどっひゃああと思ったことを思い出した。妻も娘も一緒くた、要するに「わしの(意のままになる)女」という強烈な意思を生きている平安時代の男(まあ貴族な人たちですが)を感じてちょいとイヤになった。実際のところどうなのかは未だに知らないままだが。
 で、ここまでの文脈とは全く関係なく(あるかな)、日本はこう見られている、の(多分かなり重要な)一例(日本語訳はつくりません)。
 前のじいさんはおめでたすぎのショーヴィニストでホモフォビアだったが、今のとっつぁんはどうなのかな。あれにケリもつけないで世界の祭をやろうってのがスカタンすぎ。…どうしたってかわいそうな日本。
 もうちょっと考えてみると、たぶん別姓反対の人間は、別姓で夫婦をやって平気な人間が増えるのが怖いのだ。「苗字が違うのになぜ夫婦のつながりを維持できるのか」、その根拠を自分のなかに持てないからイエにしがみつき、しがみついてるのがバレないように(みんながやってれば怖くない)他の人間にもそれを強いようとするのだ。と考えてみることに、それほど無理はないような気がするな。
…自分で訳しておいて今ごろ気づくウッカリさんではあるが、合衆国の州はそれぞれ独自の憲法を持っておるのですなあ。さすが国家連合United Statesと言うべし(ちなみに国連はUnited Nations。枢軸国に対する連合国もUnited Nations。日本は入れてもらったんだという過去は消せません)。日本に道州制が導入されて関西州ができたら、関西州だけでも同性婚や別姓婚を合法化するような憲法を作ってみるといいと思う。昔から差別が盛んな土地柄ということは、よその国内各州に比べマイノリティとのつきあいには一日の長があるというのが関西州の特色だとも言えるだろうから、事ここに及んだらいっそそのくらいのことはやってもいいのではないか。