過日のATR訪問の際にご説明いただいた ちずぶらり について、また別におもしろいことをその場で教えていただいたので備忘メモ。お話しのメインは古地図を用いた歴史体感観光ウォークとでもいうべき取組みだったが、こういう古地図とGPSを用いたものだけでなく、美術館や博物館などでもっと精度の高い(不特定多数を識別しその位置だけでなく移動の方向まで高確度で推測できる→つまりは次に表示すべきコンテンツを推測できる)しかけを用いてゲストの目の前にある展示の説明や関連情報の提示などをするというもの。これなんかはすでに、展覧会の受付で音声ガイドを貸し出してもらってそれを携行しながら館内をめぐり、指定した展示品に近づくとそれに関する説明が聞けるといったしくみが開発されていて、それだけだったらああそうですかなのだが(高野山でもやられているし)、少し前にあって藤吉は行きそびれてしまった梅棹忠夫展ではカメラ付スマートフォンを利用した新しいしくみも試みられたそうだ。
 今ネットで調べてみると、藤吉の目当てだった梅棹展は大阪の国立民族学博物館みんぱく=の方だった(Firefoxだと表示がやたらズレて断層ができてしまう)が、東京の日本科学未来館でもやっていたようだ。どちらでやられた試みなのか聞きそびれてしまったが、通常なら来館者の感想は紙のノートブックやアンケート用紙によって集められるところ、それでもできるようにしておく一方でスマホからも感想を送れるようにしたらしい。送られた感想は館のサーバに蓄積されるだけでなく館内の巨大モニタにリアルタイムで追加更新されていく。加えて、いわゆるウェブ掲示板のようなスレッド表示ではなく、ひとつひとつの感想が例の京大式カードの体裁になってモニタ画面の上の方からぽとりと落ちてきて読めるように表示され、上に新しいのが増えていくにつれ下の方に移動してやがて消えていくというもの。書かれた感想内容という点ではスレッド式と変わりはないが、梅棹先生の特別展らしい遊び。で、せっかくスマホを使っているので館内の気に入った展示物を内蔵カメラで撮影し、それを添付して感想を送信すると、その写真とともに京大式カードの画像が生成されモニタに表示されるなんてこともやっていたそうだ。これは楽しそう。来場のみなさまがどんなカードを投稿なさっているか気になる。ちょっと見てみたかったかも。
 さらに、さすが手の込んだことをなさるなあと感心させられたのは、スマホ経由以外に受け付けていた手書きの感想を書き込む用に実際の京大式カードを用意しているというだけでなく、その場に設置した書画カメラ(机上のものをスクリーンに投影したい時などに使うカメラ)で記入ずみの自分のカードを撮影し、簡単な操作でモニタスクリーンに送れるようにしていたこと。さらに加えて、そうやって自分でつくったスマホや書画カメラ製のバーチャルな京大式カードを、希望すればその場でプリントアウトして持ち帰れるようになっていること。ステキなおみやげ。その場ならではであり、その日ならではであり、わたしならではでもあるようなおみやげのひとつのかたちと言いうる。才人ですなあ。優秀な遊び相手がいることの幸福を感じさせることしきり。
…分不相応な贅沢品かもしれない平和と民主主義。