傘と記録用紙を両手に持ちながらさんざん歩き、晩ご飯でおなかぽんぽこりんになってしまったのもあって、夕べは風呂もせずにさっさと寝床についてしまったが、翌朝、便座に座りながらふと目をやるとバスタブが YAMAHA。これは珍しい、というか藤吉は見たことがなかった。ボートなんかつくってるし、成型技術は一緒ということかも。そういえば、朝ご飯を食べながら話を聞いていると、同行メンツが夜エアコンを入れようとスイッチをつけたら、パネルの上がった開口部から見えたルーバーがカビで真っ黒になっていて、あわててオフにしたそうな。こわいこわい。すみずみまで気を配るというのは、なかなか難しいのかも(経費の関係もあるしね)。…そういうところに目がいくのはさすが生き物係の先生の面目躍如というべし。

 部屋の窓から眼下を流れる川を望む。昨夜来の大雨でたっぷり増水。近くにある仙人風呂というスポットも水浸しというより水没中。この時点で紀南あたりには竜巻の注意報だか警報だか。ちょっとイヤかも。

 出発時には雨もさほどでなく、まずは行ってみようと次の目的地である新宮へ。車から見える山々には似たような崩れの跡がいくつも。昨夏の台風のすごさを思わせる。

 この日の一等最初の調査地は神倉神社というところ。大鳥居をくぐり山を上がる石段の急斜面がすごい。石造りなので接地面が一様でなく、これがまた怖い。調査開始早々大腿部が筋肉痛。上がって降りて、鳥居のそばまで戻ってきてうえを見上げてパチリ。奈良・室生寺奥の院に向かう階段を不規則な石造りにしてルートを少々アスレチックにした感じ。これは参った。筋肉痛が治まるのにまる3日。

 階段も、途中にあったスペース(祭祀をする場か)も、焼け焦げた護摩木や紙切れや(時々ひしゃげたビールの空き缶や)が散乱している。前夜にお祭りがあって、そのため新宮での宿泊予約が困難だったとのこと。どんなお祭りかというと多分これと同じもの(映像は2010年のもの)。これはこわいわ。中に入っちゃえばアドレナリン出まくりになるのかな。
 午後から次第に雲も切れてきて傘で手をふさがれることがなくなり調査の快適度が向上。新宮から那智勝浦、古座川などをまわり投宿は串本駅のそばにある小高い丘の上の(たぶん)リゾートホテル。とっつぁん3名という不思議な組合せで投宿。調査行の途中、海そばの日当たりの良い斜面に立地するお寺ではほのかに香る梅が五分咲き。

 そのうち訪れるチャンスもあるだろうと思っていた補陀洛山寺にも寄れたし銀杏の垂乳根というのも初めて見ることができた。見てると顔がカユくなってくるような虫食い岩というヘンな岩にもご対面できた。それで何か書けるかというと、う〜んだがまあよしとしよう。
 閑散期なのかツインの部屋を3人それぞれがあてがってもらえた。けっこう見晴らしがいい。左方向に見えるのがこれまた有名な橋杭岩というそうな。お大師さま畏るべし。

 で、この日の晩ご飯がなかなかおもしろかった。テーブルに案内されると例のかためたパラフィンを燃料にする簡易バーナーの上にすき焼きの素材のような盛り合わせ。称して陶板焼きというらしい。おお、しょっぱなにこんなものが出てくるとは、これからどれだけ食べねばならんのかと(おいしくいただきながら)構えていると、次に小ぶりのうどん。で、しばらくして白ご飯。途中で炭水化物とはあとは軽めになるかと思っていたら、どうやらメニューはそれでフィニッシュ。藤吉はこういうところに慣れていないのでそういうもんかですませてしまいそうだが、年配のお二人はこれはないやんかとご立腹。腹立ちついでに追加メニューであといくつかいただく。…考えてみると、宿泊時の食事ってコンビニの買い出しばっかりだからなあ。ちったあ慣れとかないといかんかもしれん。
 あいかわらずぽんぽこりんでとっとと寝る。夕食前にシャワーだけでもしといてよかった。
アジア南方の天気なう