ぶわー、やっとすんだ! 何がすんだかというと通常より一足早く、この前の月曜に実施した前期試験の一つ「社会学」の祭典…もとい…採点がすんだ。記述式試験(用紙はB4)で問題は次のとおり。
■これまで日本に定着していたが、現在ゆらぎつつあると思われる道徳をひとつ取りあげ、それについてあなたの考えを述べなさい。
 こんな問題を出して合格者を出してたらインチキでしょー、などと言ってはいけない。そこには出題者の涙ぐましい(自分で言うか。…でも誰も言ってくれないし)工夫が施されている。まず、「論述にあたっては以下の条件を満たすこと」として、

・自分の取りあげる道徳を「○○は……だ」または「○○なら……して当然だ」という一文で明示すること。
・その道徳が定着していることによって、日本社会にはどのようなメリット・デメリットがあったと言えるか自分の考えを示すこと。
・その道徳がゆらぎつつある背景にはどのような原因があると思われるか自分の考えを示すこと。
※内容に応じて適切に段落分けし、全体で30行以上記述しなさい。(用紙上限は35行)
※丁寧な読みやすい字を書きなさい。
……以上の注意事項が守られていない場合それに応じて減点する。

という縛りをかけておく。ひとつめの「○○は……だ」なる表現については、たとえば「思いやりは大切だ」とか「女の子とはおしとやかなものだ」とか「長男なら家の仕事を継ぐものだ」とか、命題のかたちで表せる道徳というのがあるというのは授業中数度にわたって言及していたことで、それを一度でも聞いて記憶にとどめていれば、その言及に派生してくっちゃべったことをアレンジすれば(それが難しいんだ!と言われそうだが)そこそこの内容は書けるようになっている。
 が、もちろんそこそこの内容を書くことが至難の業である場合もあるだろう。そんなのは落としちゃえばいいなどと言ってはいけない。だから持込可物件として、テキスト、手書きのノート、辞書を認める。加えて辞書は、電子辞書だけでなく、携帯電話を使っていいことにもする。携帯電話を使っていいということは、ネットを使ってもいいということを暗に含む。もちろん、上記の条件に当てはまらないことを一生懸命ウィキペディアあたりから引き写しても適切な答案が仕上がる可能性は低い。が、少なくともそれなりの字数(行数)を埋めることは可能である。…ここが大事。あきらめずに(ワケわかんなくても)時間いっぱいまで書きつづけることを要求する試験だと言ってもよい。自分の納得を棚に上げ言われたことに一生懸命とりくむ力、これは本学的には重視すべき力であると言える。「生き延びる力」と言ってもよい(ホントか…)。
 とはいえ、そうそう全部が全部トンチンカンな答案ばかりではないので、よく書けてる答案はそれなりに、内容がイマイチでも落とさないように、両方を塩梅するような採点基準をつくる。これが涙ぐましい(あははははは!)工夫その2である。項目の後ろにある数字が最上位〜最下位の配点を示す。全部で50点満点。

・黒くはっきりした読みやすい字で書いているか。よい(4)―ややよい(3)―やや悪い(2)―悪い(1)
・30行以上で記述してあるか。足りている(3)―21〜29行(2)―20行以下(1)
・内容ごとに段落分けしているか。適切な段落分け(3)―いまいちな段落分け(2)―段落分けがない(1)


・「です・ます」体でなく「だ・である」体で書いているか。「だ・である」体で統一(3)―「です・ます」で統一(2)―統一されていない(1)
・誤字・脱字がないか。漢字を適切に使っているか。不適切箇所が5個以下(4)―6〜10個(3)―11〜15個(2)―16個以上(1)
・句読点や記号(「」, !, ?, …, など)は適切に使っているか。不適切箇所が5個以下(5)―6〜10個(3)―11個以上(1)
・段落のはじめに1文字分の字下げをしているか。きちんとしている(3)―しているようにも見えるがあいまい(2)―しているように見えない(1)
・1行当たりの文字数は適切か。適切(5)―まあ適切(3)―不適切(1)
・言葉のつながり(主語と述語の関係、修飾語と被修飾語の関係など)は適切か。不適切箇所が4個以下(3)―5〜8個(2)―9個以上(1)


・取りあげた道徳を「○○は……だ」「○○なら……して当然だ」のかたちで明示しているか。明示してある(5)―あるように一応は見える(3)―あるように見えない(1)
・メリット・デメリットの有機的関連について言及しているか。きちんと言及している(5)―少し触れているが明らかではない(3)―有機的関連への言及がない(1)
・道徳のゆらぎの背景について自分の考えを論じているか。きちんと論じている(5)―論じているように見える(3)―きちんと論じているように見えない(1)
・授業(小テスト含む)で取り上げた学者の議論を利用しているか。適切に利用している(2)―適切な利用とは言えない・利用していない(1)
・読ませるものになっているか。なっていれば(5)※ボーナス点

てな基準をつくり、各答案に当てはめていく。最初の3項目はあえて注意書きで要求している事項。次の6項目が文章作法に関わる事項。その次の4項目が内容に関わる事項。最後のひとつはいわゆる「おもしろい」答案があればそれにつけるボーナス点。通常の大学の試験であれば、この内容に関わる4項目をもっと膨らませて細かく見ていくのだろうが、この授業では踏み込まない(1回生から受けられる授業だし)。
 次の時間には、この採点基準を配布して受講者に自分の答案(赤ペンなどは入れていない)を返却し自己採点をやってもらう。で、その結果と藤吉採点との近さによってオマケ点を出したり出さなかったり。ついでに言うと「こんな字を読まされる相手(私です)の身にもなってみろ!」という魂の叫びを心おきなく発する場ともなる(そういうのに限って「相手の気持ちになることが大事」とかノー天気なこと書いてたりするし。…心にもないことをしゃあしゃあとヘーキで言えるようになるのが坊さんになる修行だとでも思っているのか。もー!)。
 それはさておき、まあ、このくらいすれば「明確な基準に基づいて結果を評価する」というフェアネスをなんとか維持しつつ本学的現状に対応した合格率を維持することができる。
 というワケで、来週は自己採点の時間です。お楽しみに。…他のこともあれこれやりながらではあったが、やっぱ3日かかっちゃったなー。半年に一度の恒例とは言え、相変わらずくたびれた!
 これはなかなか面白い。「みなさまのご理解を得て…」なんて社交辞令言ってるより、ずっといい話ができるんじゃないか。できるようになってほしい。