ぶわー! やっと読み終わった横文字本(2冊目1巡目)! もう半年以上も前のことになるが昨年9月サンフランシスコ滞在中、カストロ通り訪問からの帰り道にあった本屋さんで購入した何冊かのうちの2冊目(1冊目は前に触れたハーヴェイ・ミルクの伝記)。で、今回は性的マイノリティの人たちのためのマナーブック。"Steven Petrow's Complete Gay & Lesbian Manners" という本。これが、400ページ近い大部なのだが、なかなか読ませます(ところによっちゃあ泣かせます)。マナーといえば塩月弥栄子先生の冠婚葬祭本くらいしか知らなかったが(しかもそれは読んでないが)、これはなかなか包括的。全体が5部13章に分かれており、小見出しをはしょって目次を写すと、…
PART I BEING LGBT / Chapter 1 Coming Out / Chapter 2 Friendship // PART II LOVE & SEX / Chapter 3 Dating / Chapter 4 Sex Etiquette / Chapter 5 Committed Relationships // PART III TYING THE KNOT / Chapter 6 Weddings & Commitment Ceremonies // PART IV CHILDREN / Chapter 7 Starting A Family / Chapter 8 LGBT Parenting // PART V EVERYDAY LIFE / Chapter 9 The Art of Connecting / Chapter 10 Social Occasions / Chapter 11 On The Job / Chapter 12 Out & About / Chapter 13 Illness & Grieving
…となっている。自分の性的志向(gender identity & sexual orientation)への気づき、カミングアウトから…中略…死を迎えるまでの、ほぼ一切合切についてまとめられている。うわー、そうなんやーと感心させられるところもあれば、そこまで明示的に書かなあかんのかと切なくなるところもある。おもしろいところでは「うちの学校では毎年秋ごろに自分ちの家系図をつくってみようというテーマで授業をするんだけれども、家にお母さんがふたりいて=レズビアンのカップルということ=、どうやら養子縁組したらしい生徒がいる。この子もちゃんと参加できるような授業にするにはどうしたらいいだろうか」みたいな学校の先生の疑問に著者が答えてる(ひとつのやり方のアイデアを提供している)ところもある(240ページ)。
おもしろいところを拾っていけばキリがないのだが(結婚についての章では日本式の結納 yuino の話とかも出てきます)、印象に残るのは legal/illegal という語がよく出てくるという点。アメリカにおいて合法であることがいかに重要なことかというのが伝わってくる。…前に挙げた『拒否できない日本』には、今のアメリカの政権において大統領、国務長官以下、主要スタッフのほとんどが弁護士出身者で占められているというようなことが書いてあってこれまたへへーと思ったが、彼の地における法というものの重要性にはよくよくの注意が必要なのかも知れない。…例の、Eternal Vigilance...ってのは思ったより切ない言葉と見る方がよさそうな気がしてきた。自己責任と相互不信はコインの裏表、とか。
同性同士の結婚の権利を認めている州はごくわずか、連邦レベルでは認められていないようで(カナダはなんだかオッケーらしい)、法的には、domestic partnerships / civil unions / same-sex marriage なんて区分があるようだ。ふたりがよけりゃ別になんでもいいじゃないかと言いたくなりそうだが、関係が非合法のままにおかれると、どちらかが重い病で入院した際に面会権が(もともとの生まれの「家族」の意向次第で)認められなかったり、葬儀への出席を認められなかったりということがあるそうだ。…藤吉は(今のところ多分)ありふれた異性愛者(あらためて明示するとおかしいね。ぷぷぷ)にすぎないが、こういうかたちで法がかかわってくるんかというのが印象深く感じられた。異文化(この場合はアメリカにおける多数派)を尊重しつつ自文化(この場合はアメリカにおける少数派)を守るという難題に真っ向からチャレンジし、部外者である異邦人(わたしのことです)もうなずかせるのに成功している(と思う)。これはいい本だなあ。これで英語の講読とかしたらおもしろいだろうなあ(誰と読むの?って話はあるが)。なんとか開講前に読み終われてよかった。すっきりしたところで月曜からの授業準備の仕上げにとりかかる!…フランス語本より英語本の方をなんとなくらくちんと感じてしまうのは、単に馴れの問題にすぎない!と自分を励ましておこう。