ひきつづき出先より。
 今年度より本学の学部必修科目「医学概論」を、長野で地域医療に取り組んでおられる医師・色平哲郎さんにお願いしている、と書けば来年度もそのつもりであることは示せるのだが、どうもそういうわけにはいかなくなってきた。彼の勤務する診療所の本部(と言っていいのか何と言うのか)である佐久病院(その筋では有名だそうな)が危機的状況に陥っており、色平さんも否応なくそのフォローにまわらなければならず、年に1回とはいえ実質5日連続で長野を離れることが困難になっているとのこと。以下に彼の送ってくれた「朝日新聞」県内版の記事のコピーを転載。…何回か前のまちけんで老人在宅医療の話が出たとき、あたしら(40〜50代)が介護を受けるようになる頃には、3日に1回おむつを替えてもらえるようなら介護としては御の字という状態になるだろうという話を聞いたが、あながち誇張でもなさそうだ(…ちょいと牽強付会)。
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佐久総合病院が患者集中に悲鳴
ベッド満床/救急にも支障  他病院の医師不足が影響
2008年1月19日の 県版/朝日
 東信地区の基幹病院、佐久市のJA長野厚生連佐久総合病院(夏川周介院長)が、患者の集中に悲鳴をあげている。ベッドは満床状態が続き、救急患者の受け入れにも支障が出ている。このため、開業医や周辺病院に入院患者や急患の受け入れを求めるが、こちらも医師不足が深刻だ。これから患者が増える厳冬期を迎える。夏川院長は「これ以上は患者を無条件に受け入れられない状況にあり、「たらい回し」が起こりかねない」と危機感を抱く。(伊東大治)

 17日夜から18日朝にかけて、佐久総合病院には7人の急患が入院した。17日夜に確保しておいた8床のベッドで、かろうじて対応できた。
 ただ、18日朝の時点で入院患者は634人。国から認められた一般病床624床を10オーバーしている。17日は12超の636人。「厳密に言えば医師法違反です」と夏川院長は隠さない。
 一般的にベッドの稼働率は95%以下が望ましいとされる。これを超えると、病棟は混雑状態となり、急患の入院にも対応が難しい。しかし同病院では昨年12月、95%を超えた満床状態の日(午前0時時点)が15あり、100%を超えた日も5あった。
 4階の小児科病棟。廊下に子供用ベッドが出されていた。病室に大人用を入れ、ベッド不足に対応するためだ。「子供がいる病室に、大人の患者が交じって入院する。担当外の小児科の看護師が担当するわけで、望ましいことではないのですが…」と男性医師。
 院内には重篤患者に対応する救急救命センターもあり、20床のベッドがある。ドクターヘリが常駐し、東信だけでなく、県内一円の急患対応も迫られるため「常に5床は空けておきたい」(看護師長)が、17日夕、空きベッドは二つだった。
 こうしたベッド不足の影響で、普通であれば経過観察するため入院させるような急患を治療後、自宅に帰すこともある。
 15日夜から16日朝にかけて、そんな急患が8人いたという。「仮に自宅に帰し、容体が急変しても即応できない。場合によっては医師の責任も問われかねないわけで、現場にも相当なストレスがたまっているのです」。地域ケア科の北沢彰浩医師が打ち明ける。
 佐久総合病院に患者が集中しているのは、他の病院の勤務医不足が影響している。小諸市の同じ厚生連の病院では夜間、麻酔科医が不在となり、「盲腸の手術もできない」。上小地域も状況は似ており、夜間の救急はいきおい佐久総合病院に搬送される。このため、昨年12月中に救急車で運ばれてきた患者は312人で、一昨年12月(259人)の2割増だった。
 医師数が約200人と比較的態勢に恵まれている佐久総合病院はこれまで、農村医療を切り開いた若月俊一名誉総長の遺志を継いで「来た患者は断らない」病院とされ、スタッフたちにも「ここが最後の砦(とりで)」との自負がある。しかし、夏川院長は「現場は限界。「救急難民」は佐久も無縁じゃないということを、住民にも知っていただきたい」と話している。

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