早起きして長々と電車を乗り継ぎ今日は京阪奈ATR研究所でえずけん。念のためと早めに出たら接続よすぎで集合時間より1時間も早く着いてしまった。ので、先に来客受付をすませてしまう。あいかわらず、許可証をいただくのが好きなわたくし。

 これまでオープンハウスのような大勢の来客で賑わっているときしかお邪魔したことがなかったので閑散感を満喫しつつ散策。ガキんちょのころ家の近くにあった中部工業大学(今は中部大学)の大学祭に友だちと出かけ、「フレッシュ・ゴードン」なども観たりしながらいろんな展示を見てまわっていた時に大学生のおにいさんたちのつくった家やビルの模型にシビれていた時分からこういうのには弱い。眼福。

 歩いているといつも(イベント時)は人でごった返している喫茶室がこれまた閑散。集合時間までしばしコーヒータイム。窓からの眺めもいいが内部を見渡していたら、ここでも売ってるココナッツサブレ。頭脳労働におやつはつきもの(!)。お店にはレジがないので券売機で食券を買って購入します。

 エントランスの壁面には研究のアウトプットで表彰を受けたスタッフの銘板が並べてある。アメリカ的だなあとも感じるが、いいと思う、こういうの。

 しばし散策ののち集合時刻に近畿大、大阪大のメンツとエントランスロビーで合流し、めあての研究員の方のお出迎えを受け、早々に会議室へ。複数の方が迎えてくださり恐縮。巨大なモニタパネルで ちずぶらり の各地での実装例について解説をいただく。今えずけんメンツでやってるのはCGで高野山内の様子を作り込み、そこにテキストや音声でスポットの解説を付加していくためのシステムづくり、であるが、ちずぶらりがおもしろいのは、古地図を利用してそこに現在のスポット情報を載せていくという試みである点(自分の現在位置も青ドットで地図上に表示される)。アプリをダウンロードしないと利用できないが、たとえば「高遠ぶらり」はそれを見ながら実際にまち歩きをすることによって、それまで桜の名所として認知されているにとどまっていた土地を、過去にさまざまな人の営みを蓄積させてきた土地として、その「過去」を現在に立ち現れさせてくれるということが地域の大人たちや小学生たちのみなさんとの実験散策によって確認されたそうだ。
 CGでの再現に取り組む場合、映像のリアリティーとデータ転送の快適性とのバランスをどうするかみたいな問題もあり、そこにはどうしても「リアル」への執着を抱いてしまうが、説明をしてくださった研究者氏によると、リアルなものよりも古地図のようなものの方が、閲覧者のイマジナリーなリアリティを刺激するという特性があり、むしろそちらの方が使って楽しいものになるのではないかとのことであった(ちなみに、この研究者氏、例のロボット博士とも別件でコラボなさっており、そのお話の際に出てきた「リアルの谷間」という言葉はなかなか示唆ぶかいものであった。要は似せようとしすぎるとある時点で似てるんだけど違和感があるという気持ち悪さを生じるんだそうな。おもしろい)。
 今は観光地をはじめあちこちで利用が始まっているちずぶらりだが、その開発の初期、アメリカのラムゼイという富豪との接触があり、そこでこのアプリを紹介したところいたく気に入られ、彼の収集した地図コレクションを無償で使ってよろしいというお許しも出されたそうな(「地図の著作権とか大丈夫なんですか」とお尋ねしたところそんな話になった)。なかなかすごいコレクション。いくつか見せていただいたなかにサンフランシスコのがあり、「あたしはこのへんに泊まりました!」なんて、ちょっとはしゃいでみたりして(きゃー、マーケットストリートだし、ユニオンスクエアだし!…ミーハーです。カストロストリートもあります)。なにわ友あれ赤井英和さんのご案内による大阪まっぷもあったりする。
 けっこう注目と思われるのは、古地図を使うにせよ現代地図を使うにせよ、そこに載せるコンテンツは観光情報に限らない、という点。たとえば地域のお店を和菓子とかケーキとかで絞り込んで地図上に表示させたり、あるいは、AED設置箇所や公衆便所を表示させたり、同じ地図を使っても時どきの目的によって表示コンテンツを切り替えられるというのはさすが紙地図ではかなわないテクノロジー。もちろん多言語表示も可能。横浜のも準備されているらしい。2014年に予定されているISA大会までに充実すれば、海外からお運びのみなさまにも重宝されるんじゃないかな。
 あと、日文研に所蔵されている吉田初三郎コレクションも使えるようになっている(数年前『別冊太陽』か何かの雑誌で特集された地図絵師と思う)。こんな地図はメッシュ(格子)による位置情報付与など望むべくもないが、そしてこれが複数古地図の同期操作が足踏みしている理由でもあるが(航空写真ではやりました)、地図のなかに手動で3000ほどのポイントをつけ、その緯度経度情報を送ってクエリ(リクエスト)することによりグーグルマップとの連動もできるようにしているらしい(この地図では高野山もマークされている)。快適に動けば、いま自分が古地図上のどのあたりにいるかといったことがわかるようになっている。それにしても3000ポイント…さすがにそれにかかりっきりでなければやってられない。気が遠くなる。
 1時間の面会予定が学生諸君をさしおいてついしつこくお尋ねしてしまい、大幅に超過して終了。年末のお忙しい時間を割いてくださったT氏、F氏に多大なる感謝。この面会をアレンジしてくださった近畿大のT先生にも大感謝。ほぼまる一日の往復時間をかけてお邪魔しただけのモトはとれまくり。ありがたいことだ。
 優良企業というのは得てして国家財政に合法的に集る術を確保している企業であるにすぎないということが、こういうのを見るとよくわかる。まあ、ちょっとやりすぎたという反省くらいはしてもらいたいものだ。ぺっぺっ。
 肝腎なところでユルいってのは、やっぱりイカンのかも。